ドイツから帰国後
講師としてのキャリアをスタート
音大を卒業した後、ドイツにわたり現地の音大のマイスターコースに通いました。28歳の頃に帰国してからは、楽器店系列の2つの音楽教室と、調律の専門学校でピアノ講師として勤めていました。根底にあったのは、幼い頃から教わってきたことを伝えたい、という気持ちと、音楽に親しむ方たちの裾野をもっと広げるために何かできないだろうか、という思いです。
同時に、ピアノリサイタルを開いたり、名曲と呼ばれる曲だけを演奏する子ども向けのコンサートを企画したりと、演奏活動にも並行して取り組んでいました。
その後、妊娠を機に講師の仕事はいったんすべて退職。子どもが小さいうちはなるべく傍にいたいと考えていたので、出産後約2年間は完全に育児に専念し、その後は自宅で音大受験生のみを対象にレッスンを行う期間が約8年間続きました。
立地の良さと充実の講師陣が魅力
自宅はごく普通の一軒家なので、レッスンをする際は自分自身のオンオフの切り替えが難しく、また教室のレッスンルームのように完全には集中しにくい、というのが悩みでした。また、教室に所属して、より多くの方にレッスンをしたい、という気持ちはずっと持ち続けていました。そのため、自分の子どもがある程度手がかからなくなったタイミングで、まずは以前勤めていた調律の専門学校の門を叩き、週に2日のレッスンを再開。併せて、音楽教室についてもなるべくひとつに縛られず、色々なところを見てみようと思い立ち、実際にあちこちへ足を運んだりしながら検討を行いました。
いわゆる条件面については、各社とも報酬の面では大差なかったことから、立地の良さを重視しました。また、それ以上に重視したのが、所属している講師やインストラクターの顔ぶれです。島村楽器の場合は、各店舗のよく見える場所に、講師陣の顔写真とともに、簡単な経歴とコメントが必ず掲載されています。それを眺めることで、ピアノ科全体として、レッスンがきちんと一定水準に保たれているであろうことは察しがつきましたし、幅広い年代の講師が所属していることから、教室全体のバランスの良さを感じました。私は、講師にとって、教室は自己研鑽の場でもあると考えています。教えることや自らの演奏に対して貪欲な講師の中に、自分の身を置きたいという想いが強かったのです。
また、家の近くにある島村楽器に楽譜を買いに行った際、少し専門的な問い合わせについてもスタッフがすぐに応えてくださる経験を何度かしていたので、店舗全体への安心感を持っていたのも応募の決め手になりましたね。
会員様個人を尊重するレッスン
現在、島村楽器では、3歳から70代まで、幅広い年代の方を対象にレッスンを行っています。講師として向き合う際は、どんなに幼い子でも、あるいはお年を召した方でも、その方の人柄や考え方を尊重したいと考えています。とくに小さい子どもの場合は、自分の考えや気持ちを言葉で説明できない場合がほとんどですが、上から決め付けて「○○しなさい」というのではなくて、この子はいま何を考えているのか、ということに思いを馳せながら、その子にしかできない表現に辿りつくための道しるべを立てて導いていく。そんなレッスンのあり方を常に心がけています。
また会員様には、効果的な練習の方法として、自分の演奏を録音して聞くことをおすすめしています。レッスン中は、会員様の演奏をあえてデフォルメしたかたちで私が演奏して聴いていただくことも多いですね。幼い頃から、演奏の特徴をつかむのが好きで、一つの楽曲を複数のピアニストを真似て弾き比べていました。そんな特技が、会員様がより良い演奏に近づくためのお手伝いの手段としても役立っていると感じます。
声楽のレッスンで“生徒”に
休日に声楽のレッスンを受けています。副科で履修していた大学時代以来の歌はやはり楽しいです。また、島村楽器で、管弦楽器の伴奏を引き受ける機会も多いので、楽曲のフレーズを“呼吸”の面から捉える勉強の機会にもなっています。ちなみに、フルートとヴァイオリンは挫折しました。リラックスしたいときは、ペットのオカメインコと一緒に歌を歌ったり踊ったりしています!(うちのコはレジ袋を見ると踊るんです。)
店舗のスタッフが、レッスンの前後に会員様お一人おひとりに必ず声をかけて、雰囲気づくりやフォローをしてくださるのが、講師としてはとても心強いです。時には好きな音楽の話題で一緒に盛り上がります(笑)。また、定期的に講師が集まって情報交換やディスカッションを行う講師会や、専門家を招いて開催される講演会など、新たな知見に触れられる機会も充実しています。講演会は、子どもの心理や、各社の電子ピアノの比較など、毎回興味深いテーマなので楽しみにしています。