新世代のポップアイコンasmiのアコースティックギターは「暖かいお布団」

TikTok流行語大賞2021『ミュージック部門賞』を受賞。2022年3月にリリースした「PAKU」がTikTok2022上半期トレンド『チャレンジ部門賞』を受賞するなど、“SNSで最も使われる歌声”とも言われる新世代のポップアイコンasmi(アスミ)。そんな彼女の初となるシグネイチャー・アコースティックギター「NT-asmi」が、HISTORY(ヒストリー)より12月に発売される。かつてギターに対して苦手意識を持ち、HISTORYとの出会いによってギターとの距離を縮めた彼女は、自身のシグネイチャーモデルにどのような意義を感じ、そしてどのようなこだわりを注入したのか。“一緒に成長できる相棒”と言える「NT-asmi」の製作の裏側に加え、10月6日(日)ラゾーナ川崎にて行われた「NT-asmi」の発売記念イベントのレポートをお届けする。

やっとギターとお友達になりました

――まずは、asmiさんがギターを持つようになったきっかけから教えていただけますか?

asmi 4歳上の姉が中学生の頃からギターを弾いていたので、ギターを弾く人に対する憧れは小学校高学年の頃から持ち始めていました。たまに「触っていい?」と言って触っていたんです。ちゃんとコード譜を見てコードを押さえ始めたのは、高校生くらいのときかな。姉の使っていないギターを借りて弾いていました。それまではちゃんとした練習もしていなかったし、本当に「触る」くらいで(笑)。

――ちゃんとギターを始めようと思ったきっかけは?

asmi 高校生になって軽音楽部に入ったんですけど、私は歌を歌いたかったのでボーカルを選んだんです。だから必ずしもギターを弾く必要はなかったんですけど、周りにはギターを担当している同級生もたくさんいて、その時からギターに対する気持ちが少しずつ強くなっていきました。

――なぜ歌いたいと思ったのでしょうか?

asmi これも姉の影響ですが、地域の集まりとか親戚のお正月の集まりで姉が弾き語りを披露していて「カッコいいな」と思ったし、そもそも歌を歌うこと自体が小学生の頃からめっちゃ好きだったんです。

――それで興味を持って軽音楽部に入ったんですね。ギターの挫折経験があったという話を聞きましたが、それについて教えていただけますか?

asmi ギターの挫折経験は…何かすぐに諦めちゃう癖があって(笑)。このコードが押さえられないとかではなくて、単純に上手に弾かれへんっていう。お姉ちゃんは中学生の頃から上手に弾けていて、私も弾けるようになりたいと思って始めたけど、そこに辿り着くまでに大きな時間と努力が必要だということを自分が弾いてみてわかったんです。それで「ちょっと無理かも」と思って何回も挫折しました。

――Fコードで挫折とかではなく、普通に練習する過程で挫折してしまったと。

asmi そうですね。「ギターが弾けるようになりたい」というよりも、弾き語りができるようになりたい、歌を歌うためにギターを弾けるようになりたかったから、歌についてきてくれないギターやったらいいや!と思って何度もやめてしまったんです。

――今のギターとの距離感は?

asmi やっとお友達になりました(笑)。

HISTORYのギターを使うことで前向きな気持ちになれた

――今回、シグネイチャーモデルNT-asmiが完成したので、これからもっとギターとの関係が深くなっていくと思います。そんなNT-asmiの製作の経緯について教えてくれますか?

asmi ライブのサポートメンバーと島村楽器の方が知り合いで、そこからご紹介していただいて「ギターを作ってみませんか」と言ってくださいました。私は今もギターの知識はそんなにないけれど、初心者だからこそ「もっとこうだったらいいのに」という視点を持っているし、そういう要望を同じ境遇の人たちと共有していけたら、それはそれですごく嬉しいし意義のあることやなと思ってお願いすることになりました。

――シグネイチャーモデルを製作する前に、HISTORYのギターを1年ほど借りて使っていたそうですね。HISTORYについてどんな印象を持ちましたか?

asmi 曲作りと、インスタライブで家からゆるく弾き語り配信をするときに使わせてもらいました。それまで私は何度も挫折をしていましたが、HISTORYのギターを使うことで挫折をせずに「がんばろう」って前向きな気持ちになれたので、それはHISTORYギターが持つ優しさなのかなって。感覚的に弾きやすいと思ったから続けられたんだと思います。

――ギターによって弾くモチベーションが変わるので、そう考えるとギター選びは続けられるかどうかにも直結しますね。

asmi そうですね。HISTORYが前向きな気持ちにさせてくれなかったら、ここまで辿り着いていないので。

――「同じ境遇の人たちと共有したい」という話がありましたが、具体的にはどの部分をこだわったのでしょうか。

asmi まずはボディを小さくしてほしいとお願いしました。私はよくギターを弾きながら曲を作ったり練習をしていると、眠くなってギターを抱えたまま寝ちゃうんです(笑)。そういうときにいちいちギタースタンドに戻していたら、もう一度弾く気持ちが湧かないというか。休憩するときにギターを置くよりも、抱きしめたまま休憩して「よしまた弾くか」と起き上がったほうがもっと練習できるなと思って。

――斬新な発想ですね。そういう観点でボディサイズを小さくしたいという人はあまりいないと思います。ボディのくびれ部分もだいぶ狭いですね。

asmi そうですね。(ギターを抱き抱えて)いつもこのまま寝転んでいます(笑)。あとは見た目のこだわりですが、私は嬉しいことにいろいろな衣装を着させてもらうので、どんなファッションにも似合うギターにしてもらいたくて、ボディサイドやバックはちょっと濃いめの木材(ローズウッド)で、ボディトップには明るい印象の木材(セレクテッドルッツスプルース)をお願いしました。シンプルでありながら、コントラストが効いていてかわいいかなと思って。

――印象的なカラーだと着る服を選びますもんね。

asmi そうなんです。落ち着く色の木材になって良かったです! あとはポジションマークにもこだわっていて、ひとつひとつ模様が異なるアバロンという貝を使用しています。世界でひとつだけのギターになるように、みんながより自分だけのギターだとテンションが上がってもらえるようにと想いを込めて、ポジションマークをアバロンにしてもらいました。

――付属されるギターケースにもこだわっているんですよね。

asmi はい。どんなファッションにも似合うように、持っていてテンションが上がるようにグレーにしました。素材も、100種類くらいある中から汚れにくいナイロン素材を選んでいます。グレーのケースってあまりないと思うしオシャレだと思います。

――実際にNT-asmiのプロトタイプをアコースティックツアー(asmi special acoustic live tour 2024『Twilight』)で使用したそうですが、いかがでしたか?

asmi めっちゃ弾き心地が良かったです! パーカッションとキーボードの3人で合わせるときもあれば、ひとりでの弾き語りもあったんですけど、サポートの方も「めっちゃ鳴りがいいね!」「アンプに繋いだ際もそのままでもとてもいい音が出ているね。」と言ってくださって、やっぱり私が漠然と感じている心地良さがあるんやなと感動しました。音の雰囲気を表現するなら「暖かいお布団」ですかね。あ、だから寝ているときに身体の上に置いてるんだ(笑)。

――つながりましたね(笑)。「暖かいお布団」という音をもっと紐解くなら?

asmi この音を聴いた人の耳を包み込むのはもちろんですけど、何よりも自分のことを包み込んでくれる。周りの人を幸せにすることも大事やけど、このギターと向き合う時間が多いのはやっぱり自分だから、その時間が素敵なものになればいいなと思うんです。そんな時間を温かく包み込んでくれる音です。

――開発の中で音色のイメージを伝える機会があったんですね?

asmi 去年の10月くらいに島村楽器さんのお店にお邪魔して、10本くらい弾き比べしたんです。部屋に入ったら10本ぐらいギターを並べてくださっていて、そんな本数を一度に弾き比べることが初めてだったので感動しました。全部を弾きながら「こっちよりもこっちかな」っていうのを繰り返して、音色に対する抽象的な意見も拾っていただきました。やっぱりボディを小さくすると、そのぶん響きが浅くなると。そこを苦労してくださって、ボディは小さいけれど響きの良いギターに仕上げていただきました。あとはネックのグリップ感。初心者の方向けに握りやすいネックに調整してもらいました。ただ、ネックを細く薄くしすぎると逆に力が必要になるので、ローポジションに厚みを持たせることで手にフィットするようになっています。そうすると自然とグリップに力が要らなくなるんです。

――弾いていてもストレスがない?

asmi ないですね。それでもあきらめそうになるときもあるけど、ギターを抱えたまま寝転んで休憩できるのがいいなと思います。

――ボディ内に貼られたラベルもかわいいですね。普通はラベルって地味なので。

asmi 私のファンクラブの名前が「パンダまみれ」なんですけど、笹の色とデザインをフィーチャーさせたらめっちゃおもろいやんと。あと、ラベルって普通はボディ内の正面に貼ってあるけど、ギターを構えてサウンドホールを覗き込んだときに見やすい位置に貼られています。

NT-asmiをきっかけに歌うことがもっともっと好きになれるような予感がしています

――今後、活動の中でNT-asmiをどのような場面で使っていきたいですか?

asmi 私にとってこれまでギターは苦手意識のほうが強くて、適度な距離感を保っていたんですけど、NT-asmiをきっかけに歌うことがもっともっと好きになれるような予感がしているんです。もっとコードを知って、もっとギターを弾けるようになって作れる楽曲の幅を広げていきたいと思うし、今回のアコースティックツアーまではライブでギターをあまり弾いてこなかったけど、これを機に少しずつ弾き語りライブでも弾きたいと思っています。今まではすごく後ろ向きだったけど、NT-asmiのおかげで変わりました。

――ギターが変わることで、浮かんでくる楽曲のアイディアにも変化があるものですか?

asmi 私は常に生活の中から歌を書いているので、たしかに自然と変わっていくかもしれないですね。

――NT-asmiをどんなプレイヤーに手に取ってほしいですか?

asmi 初心者の方にギターを好きになるきっかけになってほしいのはもちろん、あとは挫折してギターから離れてしまった人。私も何度も何度も諦めて「もう無理かも」と思っていたけど、NT-asmiとだったらもうちょっとがんばろうと思えるから、挫折経験のある人に一度触ってもらって考え直してもらいたいなって思います。

――しかも、女性も男性も手に取れるモデルですもんね。

asmi はい! asmiのシグネチャーモデルと思って買ってもらうのも当然嬉しいけど、私のことを知らない人にも手に取ってもらいやすいデザインなので、老若男女問わず使ってほしいですね。

――最後に、asmiさんが理想とするシンガーソングライター像を教えてください。

asmi ずっと憧れてきたのは片平里菜さんですけど、だからといって私があんなにカッコ良くなれるとは思っていなくて。このギターと一緒に歌が歌えたら幸せだと思っているので、これからも楽しくNT-asmiと歩んでいけたらなと思っています。

【LIVE レポート】

10月6日、日曜日ということもあって家族連れやカップル、友人同士など多くの人で賑わっていたラゾーナ川崎のイベント広場。「ドキメキダイアリー」「PAKU」「ヨワネハキ」といった色彩豊かな楽曲を披露すると、大空が広がるイベント広場は瞬時にして幸福感に包まれ、気づけば多くの人が足を止めて彼女の歌声に心を奪われている様子だ。

MCとのトークを挟み、NT-asmiを手にしたasmiは「今は日曜日のお昼なんだよね。みんなお昼ご飯食べました? 私はサンドイッチとシャケのおにぎりをいただきました」とラフな会話で会場の空気をほぐす。

「あっという間に涼しくなってきて、涼しいどころか朝晩寒かったりして、心がギュッとなる瞬間が増えてきましたけど冬の歌を歌います」

アルペジオで弦をつま弾きながら歌い始めたのは「memory」。ちょっぴりハスキーで弾力のあるasmiの歌声を、NT-asmiのきらびやかな音色が明るく照らし出す。歌とギターのみという最小限のコンビネーションにも関わらず、まるでさまざまな物語を聴き手に想起させるようだ。

次に披露されたのは、2020年にリリースされたRin音の1stアルバム『swipe sheep』に収録された「earth meal feat. asmi」をリアレンジした「earth meal」。人類が宇宙へ移住する日に寝坊し、宇宙船に乗り遅れた2人を描いたユニークな楽曲だが、インタビューでも彼女が話していた通りNT-asmiのアルペジオの音色が会場を温かく包み込む。確かにギタリストとしては技巧派ではないが、なるほど彼女が奏でるギターはまるで自身の心とリンクしているようで、その言葉と声により一層の生命力を宿している。

「私は歌を歌うとき、ギターがあるとすごく落ち着くんですよね。そうやって家で書いた曲を今から歌います」

ラストは「あっくん」。ストロークによって歌われたこの曲では、6弦から1弦までジャラーンと弾いたときの素晴らしいまとまり感、アコースティックギター特有のふくよかさ、まるでクリスタルのような繊細さが同居した有機的なトーンを響かせ、NT-asmiが持つポテンシャルの高さをまざまざと見せつける。

この日の曇り空を突き破り、どこまでも広がるような自由で優しい歌声とギターを聴かせてくれたasmi。彼女の成長と呼応するように、NT-asmiもまたその潜在能力を次第に解放していくに違いない。これからNT-asmiを用いてどのような楽曲が生まれ、そしてどのようなライブが繰り広げられるのだろうか。asmiとNT-asmiからますます目が離せなさそうだ。

asmiプロフィール

“SNSで最も使われる歌声“の呼び声高い、23歳シンガーソングライター “asmi(アスミ)”
唯一無二の愛らしい歌声で、年頃の女の子が抱く恋愛の悩みや日常の想いを切り取って歌う。
自身の楽曲「memory」や、TikTok流行語大賞2021『ミュージック部門賞』を受賞した、MAISONdes「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」で大きなバズを起こし、2022年3月にリリースした「PAKU」ではTikTok2022上半期トレンドチャレンジ部門賞も受賞し、いま”最もSNSで使われる歌声”となった、新世代のポップアイコン。
十代白書2020にてグランプリ獲得。
1st album「bond」ではCDショップ大賞2021年関西ブロック受賞。
2023年1月、再びMAISONdesに参加し「アイワナムチュー feat. asmi, すりぃ」でテレビアニメ「うる星やつら」オープニング・テーマを担当。
更に2023年4月、asmi feat. Chinozoとしてテレビアニメ「ポケットモンスター」オープニングテーマを担当。2024年5月にはメジャー1stアルバム『リボン』をリリース。
6月から全国9都市でのツアー『asmi special live tour 2024 “リボンをほどいて”』を開催。さらに9月には初のアコースティックツアー、asmi special acoustic live tour 2024『Twilight』も開催。

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この記事を書いた人

溝口 元海

エディター、ライター、フォトグラファー。