どの楽器の演奏でも悩みの上位に挙がるのが、手汗によるトラブル。汗で弦や鍵盤を押さえる手元が滑ったり、楽器が落ちそうになったり…。さらに、ベタベタ手汗が楽器に付着すると、拭き取るのも大変!
そこで、美容皮膚科医の山屋先生に、手汗の原因&対策方法を聞いてみました。演奏直前の応急ケアや、おすすめの対策アイテムもご紹介するので、ぜひチェックしてみてくださいね♪
監修してくれたのは…美容皮膚科医 山屋 雅美さん
美容皮膚科タカミクリニック副院長。ニキビ・毛穴などの美肌治療から、シミ・しわ・たるみなどのエイジング治療まで幅広く診療を行っている。美容皮膚科医としての確かな知識から、雑誌・TV・Webなど多くのメディアでも活躍中。
楽器奏者からもお悩みの声多数!どうにかしたい“手汗問題”
たくさん練習して挑んだ本番も、手汗で滑ってうまくいかなかった…。なんて経験、ありませんか?
今回、島村楽器のスタッフに楽器演奏に関するアンケートを実施。そのなかで多かったのが、手汗による悩み。楽器の種類を問わず、さまざまな手汗悩みの声が寄せられたので、その一部をご紹介します。
演奏の際、手汗で滑ってマレットやスティックがうまく固定できない!(打楽器)
テンポの速いフレーズや曲だと、手汗で滑ってミスしちゃう…。特に、黒鍵を使うとき、手汗で難易度急上昇!(ピアノ)
手汗で手が滑って弾きにくいのはもちろん、ネック部分が手汗でベタつき、かえって引っかかってしまうことも。(ベース)
楽器を手のひらで支えている部分だけ塗装が剥がれてきちゃいました…。(ユーフォニアム)
手汗で滑ってしまうのはもちろん、汗で塗装が剥がれたり、汗のベタつきで手指が引っかかってしまうこともあるんだとか。
ほぼ全楽器共通な「手汗悩み」を解決するため、汗の原因から対策方法を解明していきましょう!
手汗には種類があった!?気になる特徴と原因をチェック!
ひと口に手汗と言っても、その原因はさまざま。
基本的に、手汗は「温熱性発汗」「精神性発汗」「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」の3つに分けられます。
①汗で体温調節!「温熱性発汗」
温熱性発汗とは、体温調節のために出る汗のこと。
運動後や風邪をひいているとき、暑い日など、体内温度が高くなっている状態で、さらに体温が上がり過ぎるのを防ぎ、体温調節をするために発汗しているんです。
温熱性発汗は、基本的には、体温調節の際に全身から出る汗となります。
手汗の原因となるケースは少ないですが、可能性は0ではないため、環境に合わせて対策が必要です。
②ストレスや緊張で手汗が…「精神性発汗」
精神性発汗とは、過度の緊張・ストレスを感じるときに出る汗。
手汗の主な原因といわれていて、脇・頭・手のひらなどで、部分的に発汗することが多いのも特徴です。
人の体は、交感神経と副交感神経といわれる自律神経がバランスを取って成り立っています。ただ、ストレスを感じて交感神経が優位になることで体が緊張状態になり、手汗が出やすくなるんです。
③暑くないのに手汗が止まらない!?「手掌多汗症」
「手掌多汗症」とは、明らかな原因がないにもかかわらず、両手のひらの発汗が多くなってしまう症状のこと。
両手のひらで発汗が6カ月以上続いていて、以下のリストに2つ以上当てはまる場合は「手掌多汗症」かもしれません。
<手掌多汗症チェックリスト>
- 最初に手の多汗症状が出たのが25歳以下
- 左右の手のひらに汗をかく
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上、手の多汗症状がみられる
- 家族に同じ症状の人がいる
- 手汗のために日常生活に支障をきたしている
手掌多汗症は、実は現在でも原因は明らかになっていません。
症状が当てはまる人は病院を受診して、治療を行うのがベターです。
どうにかした~い!ベタベタ手汗のケア方法3選
手汗の原因はわかったけれど、実際どう対策したらいいのでしょうか?
手汗の原因として最も多いのはストレスや本番前の緊張による「精神性発汗」です。本番前の緊張に、すぐに対策するのは難しいかもしれませんが、日頃の生活で、自律神経のバランスを整えることで、少しでも手汗の量を減らすことができるかもしれません。
①普段の生活リズムを整え自律神経を安定させる
食生活の乱れや睡眠不足など、普段の生活リズムが整っていないと、自律神経のバランスも崩れてきます。まずは健やかな体をキープして、手汗が出にくい状態を目指しましょう。
~食事~
野菜、炭水化物、タンパク質などの栄養バランスが取れた食事を心がけて。特に、脂っこい食事に偏ってしまうのは注意です。
汗は、体温調節などの機能もありますが、要は老廃物。体に摂り入れたものや、そのときの体調が反映されます。
脂の多い食べ物ばかりの食生活だと、汗もサラサラしたものではなくベタつくような汗になってしまうんです。
~睡眠~
睡眠時間が不足していたり、睡眠の質が悪いと、交感神経が優位になり手汗が出やすい状態になります。
必要な睡眠時間の目安は8時間程度。また、睡眠の質を上げるために、就寝・起床時間を毎日そろえたり、入眠1時間前にはスマートフォンを控えるのも大切です。
次の日すっきり目覚めて、体の不調を感じないような睡眠習慣を続けてくださいね。
②リラックス&リフレッシュで緊張やストレスをケア
自律神経を整え、副交感神経の働きを優位にするために、ストレスケアをすることも効果的です。入浴やアロマでリラックスする、運動でリフレッシュするなど、ストレスをためないようこまめに発散しておきましょう。
<おすすめのリラックス&リフレッシュ方法>
- ホットドリンクを飲んでホッと一息
- 好きな入浴剤で湯船に浸かってゆったり
- お気に入りのアロマ&落ち着く音楽で心を休める
- ヨガやジョギング、ストレッチなど適度な運動でリフレッシュ
リラックスした状態のときは、副交感神経が優位に働いているんです。
香りや音楽など、自分に合うリラックス方法を実践してみてくださいね。
また、日中に運動することで、「セロトニン」という物質が活性化。ストレスホルモンの減少が期待できます。
リフレッシュするための運動は、ジョギングや簡単なストレッチなど、軽めのものから始めるのがおすすめです。
過度な運動は体の負担になったり、人によってはかえってストレスを感じてしまうこともあるので、自分に最適な方法で行いましょう。
③ひどいときは皮膚科を受診するのもひとつの手
対策をしても手汗がたくさん出てしまう人や、手掌多汗症の可能性がある人などは、病院で医師に診てもらうのがおすすめ。
汗は、塗り薬など体の外の治療がメインとなるので、皮膚科を受診しましょう。
本番当日の対策&応急処置もご紹介!
どんなに日頃から対策をしていても、当日になって手汗が出てしまう可能性も。
そこで、やっておきたい対処方法を3つご提案します。
①当日の朝に手汗用の制汗クリーム・ジェルを仕込む
手をやさしくケアしながら、汗対策ができる制汗クリーム・ジェルを事前に塗っておきましょう。
ただ、クリームやジェルは、テクスチャーの水分や油分でかえって手が滑りやすくなる可能性もあるので、アイテムによっては気をつけて。クリームが手になじむくらい時間を空けて塗る、演奏直前に使用する際にはティッシュで油分を軽くオフしておくなど、工夫してみて。
処方や配合成分によって使用感が違うので、自分に合うアイテムを当日までに探しておくといいですよ。
編集部おすすめアイテム
②直前の汗はタオルorウェットティッシュで拭き取る
本番直前に手汗が出てきてしまったら、まずタオルやハンカチ、ウェットティッシュで軽く拭き取りましょう。
タオルは給水性に優れていて、ささっと拭き取りができるものがGOOD。また、ウェットティッシュはアルコール配合のものだとベター。アルコールには水分を蒸発させる作用があるため、手汗も乾きやすくなります。
ただ、アルコール配合のウェットティッシュは、手が乾燥しやすくなってしまうというデメリットも。
皮膚が敏感な人や、汗で皮剥けしてしまっている状態の人は使用を避けたり、使いすぎに注意してくださいね。
③ロールオン・スプレー・ミストタイプの制汗剤でささっと対策
どうしても汗が止まらないなら、全身に使えるデオドラントアイテムで応急処置を。
市販の制汗剤で、ロールオンタイプやスプレー・ミストタイプのものなら、ささっと使えて、水分や油分が手に残りにくいのでおすすめですよ。
制汗剤には、クロルヒドロキシアルミニウムや塩化アルミニウムなどの制汗成分配合のアイテムや、パウダー配合で汗の水分を吸着できるようなアイテムがあるので、上手に活用するのもひとつの方法です。
編集部おすすめアイテム
日頃のケア&事前の対策で、演奏の邪魔をする手汗とおさらば!
演奏者を悩ませる手汗問題。解決するには、日頃から体調を整えておくことと、事前の手汗ケアが大事なんです。
手汗で大事なステージを失敗しないためにも、できることからコツコツ対策して、本番に備えましょう!