【プロ監修】本番前の“緊張のほぐし方”! 演奏会や試験でもリラックスできるテクニック

発表会や演奏会、面接や試験、プレゼンテーションなど、大事な場面で緊張してしまい、いつもの実力が発揮できないのはもったいない…!そこで、緊張しやすい「カチコチさん」と、緊張しにくい「リラックスさん」の2人の特徴を比較! 大事な場面で力を発揮できる「緊張をほぐすテクニック」をご紹介します。

監修してくれたのは…大木美穂さん
ドイツ在住のピアノ教育家 ・音楽家のためのメンタルトレーニング研究実践家。ドイツのハレ大学博士課程にて博士号(PhD)取得。現在ドイツ国立エアフルト大学音楽教育科にてピアノとアンサンブルおよび音楽をする人のためのメンタルトレーニングの授業を受けもち、ピアノの演奏と指導、メンタルトレーニングの研究と実践を行っている。また、メンタルトレーニングを学ぶ音楽家とパフォーマーのためのコミュニティ「音楽家メンタルトレーニングLABO」をオンラインでも主催中。音楽家のためのメンタルトレーニングメールマガジン: http://eepurl.com/hsmttH 公式LINE: https://lin.ee/mpXeJON

~登場人物紹介~

カチコチさん
吹奏楽部の部員。演奏会前はいつも緊張してしまうタイプ
リラックスさん
吹奏楽部の部員。緊張はあまりせず実力を発揮できるタイプ
カチコチさん

明日はいよいよ演奏会だね。緊張してお腹が痛くなってきた…。

リラックスさん

カチコチさん大丈夫? プロの音楽家でも緊張するって聞いたことがあるし、緊張するのは仕方ないね~。

カチコチさん

そうなんだね。なんでプロは緊張していても実力を発揮できるんだろう…。

リラックスさん

そういえば、この前メンタルトレーニングのレッスンを受けたんだ! その先生に聞いてみよう!

緊張するのは仕方ない? 緊張の正体は“本能”!

大木さん

緊張するのは、人間に備わる動物としての防衛・攻撃本能だと言われています。

かつて狩猟などをしていた頃の人間は、動物などに遭遇すると危険を察知してすぐに逃げたり、攻撃態勢に入ったりすることが必要でした。そのときの名残で、人の脳は、「不安」を察知すると体に信号を送り、危険に備えて体を緊張状態にする仕組みになっています。

具体的に言うと、心臓がバクバクと鳴るのは、鼓動を速めてすぐに攻撃できるようにするため、体が硬直状態になるのは、筋肉を固めて防衛するための反応です。

これらの体の反応は「自律神経」※の中でも「交感神経」が優位になっている状態で、ほかにも、眠れなくなったり、呼吸が浅くなったり、汗ばんだりなどの症状が現れます。

※「自律神経」とは:血圧や呼吸数などの体内の機能を無意識下で調節している神経系のこと。「自律神経」はふたつに分かれ、「交感神経」は、臓器や器官などの働きを活発にさせる神経のこと。もう一方の「副交感神経」は、それらを休める働きをする神経系。

大木さん

緊張は当たり前のことで、考えるよりも先に起こってしまうものなんです。

カチコチさん

それを聞いたら緊張するのは仕方ないことなのかと思えてきました!

リラックスさん

でも、それほど緊張しない人もいますよね? 両者の違いはなんでしょうか?

大木さん

緊張しやすい人・そうでない人の違いを、「メンタル」と「行動」でそれぞれ見てみましょう!

緊張する人・そうでない人のメンタルを比較! 気持ちが緊張の原因に

~本番前の様子~

カチコチさん

いよいよ1時間後に本番だよ…失敗したらどうしよう…。

リラックスさん

カチコチさん心配しすぎだよ~。これまで練習がんばってきたんだから大丈夫!

緊張をしやすい人にもさまざまなタイプがあります。
例えば、集中力がなく周囲を気にしたり、自分を過大・過小評価していたり、準備不足だったり、周囲からのプレッシャーを受けやすかったりするなどです。そのため、緊張しやすい人は、自分がどんなことに不安を感じているのか理解することが必要です。

大木さん

完璧主義の人も緊張しやすい傾向にあります。音楽界でいうと、クラシック音楽家に多い傾向があります。なぜなら楽譜通りに演奏しないといけない緊張感があるからです。

カチコチさん

たしかに、失敗したら一生の恥だと思ってました…。

大木さん

そういう人は、自分自身とパフォーマンスを切り離して考えてみるといいですよ。演奏に失敗したとしても、決してあなたの人間性が否定されるわけではないですから!

リラックスさん

私は演奏を通して伝えたいことや、自分自身が音楽をやっている理由を改めて確認しているから、緊張を回避できているのかも。

大木さん

それは、いいですね! 目的がわかっていると、脳がパフォーマンス自体を「危険」ではないと認識できて緊張を和らげることもできます。ほかには、感謝の気持ちを持つことで緊張が和らいだり、自己効力感(自信)が上がったりすることも研究でわかってきていますよ!

カチコチさん

それは驚きです。私も演奏ができること、聴いてくれる人がいることに感謝して本番に臨んでみようかな!

緊張する人・そうでない人の行動を比較! 過ごし方で緊張はほぐれる

続いて、2人の行動を比較してみましょう。

~本番前の様子~

カチコチさん

緊張して手が冷たくなってきた…。

リラックスさん

私は手先の運動で、指ポカポカ! 緊張もほぐれてきたよ。

緊張しやすい人は体を動かさず、考えこんでしまう傾向にあります。また、本番前も楽譜を見るなどインプットをしていると、本番で頭が真っ白になってさらに緊張してしまうということも。リラックスさんのような行動に切り替えてみましょう。

大木さん

緊張すると自律神経のバランスが崩れ、お腹を壊す人もいます。このように、心と体は密接につながっているので、緊張するときはメンタルだけでなく、体にアプローチすることも大切です。

緊張をほぐして力を発揮する10のテクニック

リラックスさんの本番直前のルーティーンには、緊張をほぐすための秘訣があるみたい。どんな方法をとっているのか見てみよう!

【本番前編】

  1. その①:深呼吸

ゆったりした呼吸をすることで、活発になった鼓動や全身の筋肉を緩めることができ、副交感神経が優位になります。

  • その②:筋肉を一気に引き締めてから緩める

「1、2、3、4」のカウントで肩を上げながら大きく息を吸い、一気に肩を落としながら「5、6、7、8」のカウントで息を吐く。

リラックスさん

体をリラックスさせるのに効果的な手法で、とっても簡単!

  • その③:ストレッチ

ストレッチなどで体を動かして血液の流れを良くすることで、心臓に集まっていた血液が全身に行き渡ります。ほかにもラジオ体操や、耳マッサージを行うことで、リラックスしながらも、体を本番に向けて準備することができます。

大木さん

リラックスして緊張をほぐし、そのまま脱力してしまっては演奏ができません。そのため、本番に向けて体と心を準備できるストレッチなどは有効です!

  • その④:鏡の前で笑顔をつくる

笑顔をつくることで、「安全な状況だ」と脳を錯覚させることができます。また、鏡でその姿を見ることでさらにリラックスできます。

  • その⑤:気合を入れる言葉を発する

「よしっ!」など言葉を発することで、自分を奮い立たせることができるので、本番前にはぴったりです。

リラックスさんが緊張しにくい秘訣は日常にもあるみたい!

【日常編】

  • その⑥:失敗に対する見方を変える

失敗を悪いことだと思い込みすぎないように考え方を変えることが大切です。むしろ失敗したときに、それをどう活かすかが重要です。

リラックスさん

わかってはいてもすぐには変えられないことなので、日頃から時間をかけて行ってみて。

  • その⑦:スケジュールを日頃からつけておく

準備不足を解消できるだけでなく、やってきたことを可視化することで、自信にもつながります。

  • その⑧:本番当日のシナリオを作る

本番に向かって集中していくために、本番当日と、本番前1週間の行動を計画しておきます。やることが明確になれば、本番に最大限のエネルギーを持っていくことができるはずです。

リラックスさん

当日に最高のパフォーマンスができるように準備しておくと良いよ。

  • その⑨:運動を習慣化する

日頃から運動をして丈夫な体を作りつつ、自分の体を知っておくことも大切です。

リラックスさん

「自分は緊張するとお腹が痛くなるタイプだから、白湯を飲んでお腹を温めよう」など、体の特性を知ることで自分にぴったりな解決策が見つかるよ。

  • その⑩:自然とのつながりを持つ

練習や準備ばかりでなく、たまには自然に触れることで心をほぐすことができます。定期的に自然に触れてリラックスしてみるのも◎。

緊張の原因を把握して自分にあったリラックス法を見つけよう!

カチコチさんに共感した人は、リラックスさんに近づけるように自分の緊張の原因や行動を見直すことからはじめてみよう。ぜひ緊張をほぐすルーティーンを参考にして、自分の実力を発揮してくださいね。

イラスト/AOI OTANI

文・取材・構成/vivace

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