弾く姿はまるで魔法使い!ふれずに演奏する「テルミン」を体験してみた!〜ネクストブレイク楽器との出会い〜

とある人気ゲームでの登場をきっかけに、一躍その名を知られることとなった「カリンバ」。

今でこそ大人気の楽器となりましたが、以前まではあまり知られていない楽器でした。

そこで、Happy Jam編集部で「カリンバ」のように今はまだあまり知られていないけど、次にくるのではないか!? と予想を立てた「ネクストブレイク楽器」をご紹介しようということに。

しかし……どんな楽器がブレイクするかなんて、我々にも正直わかりません(笑)。
ネットで調べてもなかなか決め手を見出せず、ワラにもすがる思いで近所の本屋へ。

すると、こんなものを発見。

ふれずに演奏?楽器を組み立て??この赤い箱が楽器??

気になりすぎる!これはもう買うしかない!と、即買い。

そんな今回は、この「テルミンmini」の組み立て〜演奏をはじめ、なんならプロのテルミン講師にその魅力を聞いちゃおうということで、謎に包まれた不思議な楽器「テルミン」にガツンと迫りました!

そもそも「テルミン」とはどんな楽器?

テルミンとは、1920年に発明された、“ふれずに演奏できる”ことが特徴の、世界最古の電子楽器です。

音が鳴る原理などは……難しいので省きますね(笑)。

要するに、アンテナに手を近づけたり、逆に遠ざけたりして演奏できる楽器なのです!

その姿はまるで魔法使い!

日本では、2001年にテルミン開発者のドキュメンタリー映画が上映されたことをきっかけに、テルミンがちょっとした流行に。
最近だと2020年にテルミンが発明されてから100周年となり、世界各国でイベントが開催されたそうです。

テルミンminiを組み立ててみた!

じつはこのテルミンmini、2007年に一度発売されており、当時はなんと20万部超えの大ヒットを記録した楽器なんです!
そして今回はその復刻版なんだとか。

さっそくオープン! おぉ、幼少期のプラモデルを思い出します(年齢バレ?)。
動画を見ながら組み立てられるのでカンタン!
付属のミニ楽譜も載せて完成!

30分程度で完成し、いざ実演!

プイィイィィィーーーーーーーン……!

手をアンテナに近づけると、なんとも言えないグネグネとした電子音が。

自分で組み立てた楽器が演奏できるなんて、他ではなかなか味わえない感動です。

まずは「キラキラ星」の演奏を試みるのですが……正直、ムズカシイ!

音自体はすぐに鳴って「お、イケるかも?」と思ったのですが、まず「ド」が見つからない。続いて「鍵盤の幅」みたいな距離感がわからないので「ド→レ→ミ」すらままならない……。

それでも、初めて自転車に乗るときと同じで、だんだん感覚的なものがつかめてきます。

数十分ほど格闘すると「ちょっと音痴なチャルメラ」みたいな演奏ができるようになり、うれしくて子どもたちに報告(というか自慢)。

すると……

音が出る不思議な箱を無邪気に楽しむ子どもたち。やっぱり楽器は楽しいね!

子どもたちが取り合いでケンカになるほど大人気(笑)。しばらくブインブインやってました。

ようやく面白くなってきたところだったのに、子どもたちは全然返してくれる気配がありません。

そこで、その間に親は考えました。

「そうだ、直接テルミン講師に聞いてみれば演奏のコツも聞けるし、テルミンの魅力をよりきちんと伝えられるのでは?」と。さっそく検索!

島村楽器の音楽教室で探したところ、なんと都内で “1人だけ”テルミン講師が!

後日、自作のミニテルミンを抱えて取材をさせていただくことになりました。

テルミンの魅力はずばり「変わった音色」

お話を聞いたのは、パサージオ西新井店の金子先生。

金子 由加(かねこ ゆか)先生 テルミン奏者・島村楽器パサージオ西新井店テルミン講師
映画美学校音楽制作コース(現:美学校音楽講座)修了。大谷能生、菊地成孔、岸野雄一、高山博、横川理彦の各氏に学ぶ。
テルミンを竹内正実氏、やの雪氏に、即興演奏を巻上公一氏、横川理彦氏に学ぶ。
活動名はchintaijinkak。個人レーベル「エシオヴ・ニメレート」運営。テルミン操縦士 ニメレート号等の作品リリースやメタバース、リアル~インターネットでの時に裏方な音楽活動を展開。また、音楽療法的な活動も行っている。

テルミンのキャラクター「てるにめちゃん」をモチーフにした“オリジナルTシャツ”からは、まさにテルミン愛が伝わってきます!(笑)

ふれずに演奏する楽器だけに「近づかないで」のジェスチャーがユーモア◎
サトウ

さっそくですが先生、ずばりテルミンの魅力を教えてください!

金子先生

なんと言っても音ですね。こう……すごく変な音がするんですよ。

サトウ

変な音ですか(笑)!?

金子先生

あ、もちろんいい意味で、ですよ。
音色も調整できて、バイオリンなどの弦楽器、トロンボーンなどの管楽器、さらには人の声のような音まで出せるので。

サトウ

すごい!シンセサイザーみたいなものでしょうか?

金子先生

そうですね、テルミン自体シンセサイザーの先輩ですからね。

サトウ

ただ「ドミレファソラシド」のような音階が弾ける鍵盤楽器とはまたイメージが全然違いますよね。

金子先生

そうですね。テルミンは「ドレミ」の区切りがないので音程を少しずつ変えることができますし、一般的な機種では音域がかなり広いので、その意味では自由度が高いところも魅力です。

サトウ

先生、僕はその広すぎる音域のせいで「ド」すら見つからず挫折しています……。

金子先生

テルミンは「正確じゃない」ピッチすら表現として味わえる楽器だと思っています。とはいえ音を探すときは、チューナーを見て合わせるよりは鍵盤と耳で合わせることをおすすめしています。

それに弾く環境によっては、数mくらいの距離で誰かが動いただけでもプレイヤー本人にしかわからない悪影響があるんです。人の動きを感知して鳴る楽器ですので、そのへんはすごく繊細です。狭いステージでセッションするなんてときは本当に大変ですよ。

だから、演奏中の「不利な」状況や「不完全」を受け入れたり、逆に、“不完全ならではの面白い表現”を生み出せるかを考たり、を行ったり来たりしながら弾いていますね。

電子楽器なのに繊細で不完全……なんとも哲学的でカッコイイ楽器!

このお話で一気にテルミンに惹かれてしまいました!

先生に教わりながら実際にテルミンの演奏にチャレンジ!

先生にチューニングしてもらって、
おおぁぉぉ、鳴るぅー!

特別に、少しだけテルミンを弾かせていただくことに!

右手は、近づけると高い音に、左手は近づけると小さな音になっていきます。

金子先生

アンテナから1本の線が出ているのをイメージしていただいて、その線上を行ったり来たりする感じで手を動かすのが基本です。そのとき、線上の点から点に移る感覚がつかめるといいと思います。

サトウ

(なるほど、だからつまんで弾いているように見えるのか!)
…こういう感じですかね。

サマになってきました!
サトウ

(数分間弾かせてもらい)先生、「チューリップ」くらい弾いてみたいんですが、やっぱり「ド」が見つかりません(泣)。
少しお手本を見せてもらってもいいでしょうか?

金子先生

わかりました。

……そうして演奏していただくと、ふんわりした優しい雰囲気の先生の表情はガラッと一変し、まるで何かが憑依したかのような圧巻のパフォーマンスが始まりました。

なんといっても、目の前で聴くとより迫力がありとても感動!

初心者の僕に参考になったかどうかはさておき(笑)、テルミンの素晴らしさがビシビシと伝わってくる演奏でした。

好きな人が好きに演奏すればいい、それがテルミン!

サトウ

金子先生、僕色々教えていただいたことですっかりテルミンに魅了されちゃいました!今回の僕みたいに、テルミンの魅力がもっと広く知れ渡ればプレイヤーは確実に多くなっていくと思うのですが、そうなればやっぱり先生としてもうれしいものですか?

金子先生

ピアノやギターみたいに大メジャーにならなくてもいいかなとは思いますね(笑)。もちろんレッスンを受けてくださる方が増えたらうれしいですよ!人とは違うことがしたい方、楽器をあきらめていた方、効果はわかりませんが「癒し系音色」が好きな方にもおすすめです!

サトウ

え、あっ、そうですよね!(楽器の知名度が上がることは当然うれしいことだと思っていたけど…笑)

金子先生

よく生徒さんから「あえてこの曲をテルミンで弾いてみたい」と、けっこう意外な曲を持ち出されることも多いんですが、どれもやってみると「こんなアプローチも素敵!」とこちらが刺激を受けるような仕上がりになるんです。テルミンは第一印象が強い楽器ですが、多様な魅力がある楽器だということを多くの方に知っていただきたいですね。

まさに可能性にあふれた楽器で、ネクストブレイクの素質◎のテルミン!

「ちょっと目新しい楽器にさわってみたい」なんて人、「馴染みの楽曲に新しい音色を求めている」なんて人、そして何より「ここまで読んでいただけたあなた!」に、超オススメです!!

お近くの楽器店でぜひチェックしてみてくださいね。

テルミンの魅力を知る一番の方法は、やっぱり実際にふれてみることだと思います。

“ふれない”で演奏する楽器なんですけどね!(笑)

島村楽器音楽教室テルミンコース<パサージオ西新井店>

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ご紹介した書籍

大人の科学マガジンBEST SELECTION 06 テルミンmini

■定価:3,850円 (税込)■発売日:2022年9月13日(木)
版型:A4変
総ページ数:24
発行所:(株)学研プラス

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この記事を書いた人

佐藤 卓

元シンガーソングライターなコピーライター。
仕事か、子どもと遊ぶか、清水エスパルスの応援が人生。