Happy Jam編集部のオオフカです。世界で最も偉大なロックバンドと言えば皆さんはどのバンドを思い浮かべますか?好きなバンドはそれぞれあると思いますが、影響力を考えるとやはりザ・ビートルズを挙げる人は多いのではないでしょうか!
今回はその、ポップカルチャーに大きな影響を与えたザ・ビートルズのメンバー別のチャートランキングや歌詞の世界をグラフで見てみたいと思います!
ポップミュージックの巨人、ザ・ビートルズ
以前、『グラフで見よう、ポピュラー音楽の流行』の記事でもご紹介したとおり、ザ・ビートルズは1962年にデビューして以来、その革新性でポップミュージックの世界を変え、現在も新たなファンを生み続けています。
リアルタイムで経験していなくても、再発掘された音源や映画が発表されるたびに、現在もなお、大きな話題を呼んでいるので、皆さんもザ・ビートルズの楽曲は、どこかで一度は耳にしたことはあるでしょう。ザ・ビートルズといえば、昨年からディズニープラスにて配信された映画「ザ・ビートルズ:Get Back」が記憶に新しいですね!
グラフは『グラフで見よう、ポピュラー音楽の流行』でも紹介した、Tableau(タブロー)という分析ツールを使っています。今回は、Tableauユーザーのアダム・E・マッキャンさんが作成したグラフを元にビートルズの歌詞がどうなっているのか紹介します。
目次
ザ・ビートルズについて
ザ・ビートルズは、1960年代から1970年にかけて活動したイギリス・リバプール出身のロックバンドです。メンバーはジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人。1962年に「ラヴ・ミー・ドゥ」でデビューし、1970年に解散しました。20世紀を代表する音楽グループで、解散から50年以上が経った現在でも、ポップミュージックのみならず、様々な分野に多大な影響を及ぼしています。
メンバーについて
ジョン・レノン(ボーカル、ギター)
ザ・ビートルズを立ち上げたリーダー。ポール・マッカートニーとの共作や単独作で多くの名曲を残しました。ザ・ビートルズ時代にジョン・レノンが作曲したものでは「カム・トゥゲザー」などがあります。ポップな曲はもちろん、アバンギャルドな作風やメッセージ性の強い曲も作っています。解散後は、妻のオノ・ヨーコとの活動が有名で、オノ・ヨーコとの共作とされている「イマジン」は2021年の東京オリンピックと2022年の北京オリンピックの開会式で流れました。
カム・トゥゲザー
イマジン
ポール・マッカートニー(ボーカル、ベース)
メロディアスな作風が多く、キャッチーで親しみやすい普遍的な名作を多く作っています。ポール・マッカートニーの「イエスタデイ」「レット・イット・ビー」は皆さんも聴いたことがあるのではないでしょうか?現在も一線で活躍し、ギネス世界記録で「ポピュラー音楽史上最も成功した作曲家」として認定されています。
イエスタデイ
レット・イット・ビー
ジョージ・ハリスン(リード・ギター、ボーカル)
ジョン・レノンとポール・マッカートニーと比較すると、やや地味になりますが、ザ・ビートルズ中期から後期には、作曲面でも才能を開花させ、アルバムの中で重要な位置を占める名曲を残しています。ザ・ビートルス時代の代表曲「ヒア・カムズ・ザ・サン」はSpotifyでもっとも再生回数が多いビートルズの楽曲となっています(2022年3月現在)。
ヒア・カムズ・ザ・サン
ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス
リンゴ・スター(ドラム、ボーカル)
温厚で社交的な性格で、解散後も他のメンバーのアルバムに参加するなど各メンバーと良好な関係を続けました。「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」(ポール・マッカートニーとジョン・レノンの共作になります)ではリード・ボーカルを務めています。自作曲としては、「ドント・パス・ミー・バイ」などがあります。
ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ
ドント・パス・ミー・バイ
今回のグラフについて
それでは、さっそくグラフを見てみましょう!
・An Analysis of the Beatles | Tableau Public
このグラフは、マッキャンさんが公開データを元に作成しており、1964年から1970年にUSヒットチャートTOP100に入った52曲の作曲者別の内訳をグラフ化しています(アルバムは英国盤ではなくUS盤に準拠しています)。
よって、英国盤のチャートや1970年以降も含むデータとは異なった結果になっていますので、ご了承ください。
ここでは、ポール・マッカートニーとジョン・レノンの共作(以下、「レノン=マッカートニー」とします)および、各メンバー4人のそれぞれが作曲した曲のチャートのランキングを作曲者別に示しています。さらに、歌詞に使われている言葉や歌詞の言葉の数もグラフ化しています。
ジョンとポール、どっちのヒット曲が多い?
ザ・ビートルズは、全員ソングライティングできますが、楽曲はポール・マッカートニーとジョン・レノンが中心になっています。ジョージ・ハリスンも素晴らしい曲(特に後期)がありますが、この二人よりは少なくなります。
ザ・ビートルズを語る上で、ポール・マッカートニーとジョン・レノンは色々な側面で比較されてきましたが、TOP100入りの楽曲ではどうなっているのでしょうか?
結果はジョン・レノン18曲、ポール・マッカートニー15曲となっておりビートルズ活動期全体でのチャートインの曲数は、ジョン・レノンの方が多いという結果になりました!(ちなみにレノン=マッカートニーは17曲となります)。
ただ、ザ・ビートルズは、当初ジョン・レノンが主導権を持ちレノン=マッカートニーとジョン・レノンの曲が中心でしたが、後期はポール・マッカートニーがリーダーシップをとるようになります。
ザ・ビートルズの育ての親といわれるマネージャーのブライアン・エプスタインが亡くなってから、グループをまとめる人間がいなくなったことで、ヒット曲を量産していたポール・マッカートニーの発言力が強くなり、グループの方向性やアルバムコンセプトについては、ポール・マッカートニーの意向が強くなっていったようです。
今回のTOP100入りソングの傾向でも、1966年のアルバム『リボルバー』の前まではレノン=マッカートニーとジョン・レノンの曲がほぼ全体を占めていましたが(TOP100入り26曲の内、ポール・マッカートニー単独曲は3曲のみ)、『リボルバー』以降は、ポール・マッカートニーの曲が増えていっています。
ヘイ・ジュード
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
ちなみに、1967年から解散する1970年までのザ・ビートルズのNo.1ヒット12曲の内、8曲がポール・マッカートニーの曲となっており(対して、ジョン・レノンは2曲)、そこからもポール・マッカートニーがバンド主導になっていった傾向が読み取れます。
ザ・ビートルズでよく出てくる歌詞は「LOVE」と「KNOW」!
このグラフでは、ザ・ビートルズが歌詞でどんな言葉を多く使っているかも分析しています。
歌詞で使われている言葉を見てみると、レノン=マッカートニーとポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンは「LOVE」(愛)がトップとなっており、ジョン・レノンも2つめが「LOVE」なので、ザ・ビートルズの一番伝えたかった言葉としては、「LOVE」が一番ということになりそうです!
ザ・ビートルズの場合、個人的なラブ・ソングでも素晴らしいものが多いですが、もっと広い範囲での普遍的な世界や人類そのものに対して「LOVE」のメッセージが込められていると思われます。時代や国境を越えて愛され続けているのは、そういった側面があるからではないでしょうか?
愛こそはすべて(All You Need Is Love)
そして、次に多く使われている言葉は「KNOW」(知る)となりました。言葉や歌詞には、様々な意味が込められているので、解釈は難しいですが、ザ・ビートルズは時代を切り開いて、新しいことを生み出していった存在であることを、本人達も自覚していたはずなので、未知の世界をどんどん知るという意味での「KNOW」は重要なキーワードだったかもしれません。
トゥモロー・ネバー・ノウズ
また、ポール・マッカートニーとジョン・レノンのそれぞれで「LOVE」と「KNOW」以外の傾向を見ていくと、ポール・マッカートニーは「WILL」(~しよう)といった前向きな意思や、「SAY」(言う)のような、外向きのコミュニケーションの言葉がある一方、「BACK」(後ろ)といった慎重さを思わせる言葉もあり、興味深い結果となっています。
ハロー・グッドバイ
一方、ジョン・レノンは「CAN」(できる)や「GOT」(得た)といった可能性を感じさせつつも、自分に問いかける意味合いも含む言葉を使っているように思われます。
悲しみはぶっとばせ(You’ve Got To Hide Your Love Away)
ソロになってからは、ポール・マッカートニーはヒットメーカーになる一方、ジョン・レノンは社会的なメッセージや内向的な曲が多くなり、二人の方向性が大きく異なることになりましたが、ザ・ビートルズ時代の楽曲の言葉からも、何となくそのニュアンスが読み取れるのが面白い点です。
6つの単語だけでできている歌!?
さらにこのグラフでは、各楽曲の使われている単語数も分析しており、一番少ない曲がポール・マッカートニー作曲の「ワイルド・ハニー・パイ」の6単語、最も多い曲がこれまたポール・マッカートニーで「ロッキー・ラックーン」(名義はレノン=マッカートニーですが、実質はポール・マッカートニー作曲)の135単語となっており、ポール・マッカートニーも実験的な曲作りをしていることが分かる結果となっています。
「ワイルド・ハニー・パイ」は、“Honey Pie”だけを数回繰り返し、最後に“I Love You ya, Honey Pie”とだけ言って終わります。
ワイルド・ハニー・パイ
一方、「ロッキー・ラックーン」は、一つの物語になっていて、細かく状況を説明するような歌になっており、その分、言葉が多くなっています。
ロッキー・ラックーン
どちらも「ザ・ビートルズ(通称:ホワイト・アルバム)」での収録曲で、このアルバムは各メンバーのソロプロジェクトの傾向が強く、それぞれが自由に作った曲が多いのが特徴です。ポール・マッカートニーもその流れでこれらの曲を作ったと思われます。
まとめ
以上、ザ・ビートルズの歌詞の世界をグラフで見た結果はいかがだったでしょうか?ここで紹介しているのは、ザ・ビートルズの一面に過ぎませんが、こうやってグラフで見ると、様々な要素が見えてきて、これまでザ・ビートルズをよく聴いてきた人も違った見方ができるのではないでしょうか?また、あまりザ・ビートルズを聴いたことがない人もこれを機にぜひ、聴いてみてください!
このサイトでは、分析結果が分かるだけでなく、TOP100入り各曲の試聴ができます(グラフの“♪”を左クリック→右側のアルバムアイコンを左クリック)。皆さんも、ぜひ気軽にザ・ビートルズの世界を楽しんでください!