音楽ライターのしばたです。私たちの身の回りには、音楽をテーマにしたアイテムがたくさんあります。例えばHappy Jamでも既にご紹介した音楽モチーフのお菓子がありますし、また皆さんの身近なもので言えば、ペンダントやブローチのようなアクセサリーを目にされたり思い出される方も多いのではないでしょうか。
他にも何かないかと腕組みして考えてみたところ、腕時計が目に飛び込んできました!そこで調べてみると、スイス製の高級腕時計で音楽をモチーフにしたブランドを発見しました。その名は『レイモンド・ウェイル』。創業時より音楽が常にそばにあり、現在は音楽に由来する名称のコレクションや、ザ・ビートルズなどの著名アーティストとのコラボモデルも積極的に展開しているそうです!
なぜこれほど音楽にこだわってきたのか、そこから見える音楽と時計の共通点とは?日本国内総代理店を務める、株式会社GMインターナショナルの安藤 嘉美さんにお話を伺いました。
音楽とレイモンド・ウェイル。その関係性とは
ー今この場にたくさんの腕時計をご用意いただきましたが、どれも品があってキレイですね!私はこの「レペット」とのコラボモデルが気に入ってしまいました。改めて、レイモンド・ウェイルとはどんなブランドなんでしょうか?
安藤:その名の通り、”レイモンド・ウェイル”という人物が1976年に立ち上げたブランドです。彼は1926年にスイスのジュネーブに生まれ、当時ヨーロッパで人気の時計メーカーにてキャリアを積んだのちに自身の会社を立ち上げました。
※機械式時計…巻き上げたぜんまいがほどける力を動力とする時計
ちなみに当時は安価で高品質な電池式(クオーツ)時計が普及し始めた時代で、スイスの伝統的な機械式時計産業にとっては逆風だったんです…。しかし創業者は様々な部品メーカーの仕事を守るためにもあえてブランド立ち上げました。伝統的な高級腕時計様式を外装に取り入れつつ、中身はクオーツの機構を取り入れたエントリーモデルを展開したことでビジネスに成功。その後も機械式時計のコレクションを展開し続け、スイスの時計産業を支えてきました。
ー創業のきっかけ自体に、非常にストーリー性がありますね!なぜ、音楽をテーマにされてきたのでしょうか?
安藤:創業者自身がクラシック音楽、特にオーケストラが大好きだったからです。そして彼にとっては、80人以上が一糸乱れずひとつの音楽を奏でるオーケストラの織りなす豊かな世界観が、一つひとつのパーツの精巧さ、技術力、審美性の高さを大切にする時計に似ていたのです。
一方で彼の家族にも何名かプロの楽器演奏家がいて、音楽一家でもあるんです。このように、創業者の音楽を愛好する気持ちや芸術への関心が、後々のコレクションへと反映されていきました。
ー時計にもオーケストラの人数と同じくらい、時にはそれ以上の数のパーツが使われていると聞いたことがありますが、まさに大人数で演奏するオーケストラと通ずるものがありますね!
安藤:そうですね!そして音楽も腕時計も、「自分らしさを表現するツール」という点が共通していると思います。例えば同じ曲を演奏するとしても、演奏者によって曲に対する解釈も演奏の仕方も変わり、まさに自分自身が表現されていると言えます。腕時計も同じように、「自分で考えて選んだ時計を身に着けること」が、その人自身を表現する手段になるのではないでしょうか。
ー一見すると身近な共通点のように思えて、実は意外と気づけなかったりする、ステキな共通点ですね!
音楽が色濃く反映された、魅力的な時計たち
ー今ディスプレイされているコレクション(シリーズ)の中でも、「マエストロ」「タンゴ」「トッカータ」など、音楽に由来するものがたくさんありますね!例えばマエストロの文字盤外周はアナログレコードをモチーフにしているのだとか。時計のコレクションとして音楽の要素を取り入れ始めたのはいつからでしょうか?
安藤:モーツァルトの生涯を描いた映画『アマデウス(1984年)』とのタイアップに向け、1983年に開始しました。映画と同名の「アマデウス」というコレクション名で発売し、これを機に翌年から音楽にインスピレーションを得た展開を大々的に行うようになりました。おもに「フィデリオ」や「トラヴィアータ(椿姫)」などのオペラ作品名にちなんだものが中心でしたね。
ー最近のトピックスとして、著名アーティストとのコラボレーションに注力されているそうですね。
安藤:2016年のザ・ビートルズとのコラボモデル発売を皮切りに、デヴィッド・ボウイ、AC/DCなどさまざまなロックミュージシャンの限定モデルを発表しています。2016年が創業40周年であったことから、これを記念してアイコニックなモデルを出そうということになりまして。
ーその経緯を教えてください。
安藤:現CEOのエリー・ベルンハイムは「生き残るためには進化し続けなければならない」と常に話しています。音楽という軸はぶらさずに、常に発展し続けていくために、新しい取り組みとしてアーティストとのコラボを強化するようになったんです。
ーこれだけ著名な方々とコラボするのは、なかなか大変ではないでしょうか?
安藤:そこはやはり、スイス発の時計ブランドであること。何よりも音楽を愛するブランドであることが信頼につながり、実現できたのではないでしょうか。ただアーティストの事務所にお金を積めば実現できるわけでもありませんので…(笑)そしてベルンハイム自身は「チャレンジングだけど、とても楽しい」と話しています。絆や人脈をとても大切にするブランドですので、アーティストとのつながりを作ることを楽しんでいる印象ですね。
ープロジェクトが「楽しい」と思えるのは素晴らしいことですね!音楽好きの方からはどんな反応がありますか?
安藤:ディテールの細かさを評価いただいていると感じます。例えばザ・ビートルズのコラボモデルでは時計本体へのこだわりだけでなく、有名なアルバムジャケットをイメージした時計ボックスを作ったり、アンプメーカーのマーシャルとコラボしたときは、時計表面をアンプ表面のようなザラつきのあるものにしたりと、細部までしっかり作りこんでいます。
ー確かに、音楽好きがググっときそうなポイントを押さえてますね!最後に、ブランド全体の方針として、今後音楽好きの方にどうアプローチしていきたいですか?
安藤:今後も、腕時計や音楽を通じて自らを表現することの素晴らしさを伝えていきたいですね。今は時間を確認できる道具は世にあふれています。スマホやパソコンでも確認できますし、機能性を求める方はスマートウォッチを選択する方もいらっしゃいます。そんな中、腕時計を身に着けることは「自分らしさの表現」に他なりませんから。自分らしさを表現できるようなステキな時計の数々を、今後も発表していきますね!
まとめ
楽団員一人ひとりの演奏が生み出す壮大なオーケストラと、一つひとつの細かなパーツが動作し合うことで時を刻む時計。そして、音楽も時計も共に「自己を表現できるツール」になりうるということ。音楽を愛するレイモンド・ウェイルならではの興味深い見解を聞くことができましたね!
「時間なんてスマホで確認できるから…」というあなたも、ちょっと視点を変えてみて、あなたらしさを表現できる腕時計を探してみてはいかがでしょうか。